経営哲学・知の実験室|”銀座スコーレ”上野テントウシャ

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株式会社"銀座スコーレ"
上野テントウシャ

罹る

【 英語表記/読み方 】

To Be Afflicted/かかる

【 定義(Definition) 】

【 定義 】

(Definition)

外部の正解や前提を自らの信念として無自覚に内在化し、その信念が揺さぶられた瞬間に自己を乗っ取り、過剰な反応を引き起こす意識状態。

【 説明(Description) 】

【 説明 】

(Description)

「罹る」とは、所有構文の内側で生じる発症現象である。
人は「理解」や「正しさ」を所有しているつもりでいるが、実際にはその所有された概念のほうが自律し、主体を操作しはじめる。
外的には“自分の考え”として語られながら、内的には“借りものの信念”が反応している。
このときの言動は理性的判断ではなく、信念の防衛反射として生じる。
罹りとは、所有の構文が内面化し、信念が主体を媒介にして自己保存を試みる状態である。

【 構造的特徴(Structural Characteristics) 】

【 構造的特徴 】

(Structural Characteristics)

所有は「掴む」ことで世界を安定させようとする構文であり、罹りは「掴んだものに掴まれる」瞬間に発症する。
外的には、理念・正義・理解といった“持つ”行為として現れ、内的にはそれらが主体を支配する“持たれる”現象へ転化する。
この構造では、信念や正解はもはや道具ではなく、主体の代わりに語り、行動する“信念体”として振る舞う。
罹りの本質は、所有構文が内的に反転し、自己と信念の境界が曖昧化することである。

【 比喩(Metaphor) 】

【 比喩 】

(Metaphor)

  • 握ったはずの手が、自分を掴み返す。
  • 悪霊が乗り移るように、信念が宿主の言葉を使って自らを正当化する。

【 用例・文脈(Usage / Context) 】

【 用例・文脈 】

(Usage / Context)

  • 〔社会〕

    SNSや報道の場で「正しさ」が過剰に主張されるとき、それは罹りの典型である。
    人は自らの意見を所有しているつもりで、実際には時代の前提を語らされている。
    社会的議論が熱狂や断罪に傾く背景には、“正解ウィルス”が共同体的に蔓延している構造がある。
    カリスマ的個人や思想が感染源となり、SNSを媒介に罹りが集団的に増幅することがある。
    共鳴と所属感が拡散経路となり、信念が社会的ウィルスとして自己増殖していく。

  • 〔組織〕
    組織において「理念」や「方針」が絶対化されるとき、メンバーは理念に罹る。
    現場の現象より理念の整合性を優先し、異論を排除する。
    理念が信念体として自律化し、経営判断が“理念を守る反応”に置き換わると、組織は更新能力を失う。

  • 〔家庭・個人〕
    個人では、「こうあるべき」「努力は報われる」といった信念に罹る。
    その信念が否定された瞬間、怒り・悲しみ・正当化といった過剰反応が生じる。
    本人は“自分が感じている”と思っているが、実際には“信念が反応している”状態である。

【 関連語(Related Terms) 】

【 関連語 】

(Related Terms)

所有構文/無自覚の前提/正解主義/信念構文/自己同一化

【 引用または出典(References) 】

【 引用または出典 】

(References)

エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』(1941)
カール・G・ユング『自我と無意識の関係』(1928)
グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学』(1972)
スラヴォイ・ジジェク『イデオロギーという崇高な対象』(1989)
ハンナ・アーレント『エルサレムのアイヒマン』(1963)

【 備考(Note) 】

【 備考 】

(Note)

2025/11/10 統合版:「所有構文の内的発症」として再定義。
参照・展開元:
罹ってる、という感覚について》(2025)/《どこまでも深く根付く“所有”》(2025)

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