理念形成から始まる経営コンサル|”銀座スコーレ”上野テントウシャ

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"銀座スコーレ"上野テントウシャ

《 僕は一体、何がしたいんだ? 》

僕は一体、何がしたいんだ?

- 生き方の輪郭を確かめる -

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プロローグ:

何かを終えたあと、ふと訪れる問いがある。
「僕は一体、何がしたいんだ?」

それは目標や目的とは少し違っていて、
どこか身体の奥に沈殿していたものが、
ひとりでに浮かび上がってくるような感覚だ。

誰かのためでも、何かのためでもなく、
ただ今の自分がどんな音を鳴らしているのか。

そんな気配を確かめるように、
僕は書いている。

第一節|問いがぽとりと落ちるとき

私はいつも、こんなことを考えている。
考えようとしているわけじゃなくて、
気づくと、頭の中にふと浮かんできている問いがある。

僕は一体、何がしたいんだ?

それは決まって、何かをやり終えた直後や、
誰かと真剣に話したあと、
ふとしたすき間に入り込むようにして訪れる。

大げさな言葉ではないけれど、
そのたびに少しだけ足が止まり、
自分の中の“音”に耳を澄ませるようになる。

問いはいつも唐突で、そして静かだ。
でも、なぜだか無視できない。

第二節|コラムという“痕跡”

コラムを書き始めたのは、
何かを伝えたかったからというより、
ただ、自分の中に残ったものを言葉にしておきたかったからだと思う。

今の自分の痕跡として、残しておきたい。
あとで読み返したとき、
「あぁ、こんなふうに感じていたんだ」とわかるように。

言葉を並べることは、
自分の立っている場所を確かめるような行為だった。
それは、思考の整理ではなく、
感覚の輪郭をなぞる行為に近い。

立脚点。輪郭。備忘録。
どれも正しいけれど、少しずつ違ってもいる。

要するに、「ここにいた」ということを、
どこかに置いておきたかったんだと思う。

第三節|なぜ“変容”に惹かれるのか

コンサルティングの仕事をしていると、
人の変化に、何度も立ち会うことになる。

でも、私が惹かれているのは「変わった」という結果ではない。
その変化の間に生まれる、もっと細かくて曖昧なものだ。

・誇らしさが静かにほどけていく瞬間
・プライドが痛みとして浮かび上がる時間
・過去の自負心が、じわじわと“罪”のように感じられてくること

そういったものに触れるとき、人はどこか優しくなる。
でもそれは、同時に鋭く、厳しくもなっていく。

他者にも、自分にも、ちゃんと向き合おうとする姿勢が、そこに生まれている。

それを見ていると、
この仕事は“正しさ”や“成果”を追うためにあるんじゃなくて、
もっと根源的な、「人が人として在ること」に立ち会う営みなんだと感じる。

たぶん私は、
そういう場所に、静かに居続けたいだけなのかもしれない。

第四節|現れている“質”との対話

自分でも不思議に思う。
人の内側に深く関わる仕事をしていながら、
実のところ、個々の“人そのもの”に強い関心があるわけではない。

共感を求めたいわけでも、関係性に重きを置いているわけでもない。

私が惹かれてきたのは、
その人をいま構成している“要素”や“質”そのもの。

どんな背景を背負い、どんな信念や痛みを抱えて、
その瞬間に、どんなふうに「在っているのか」。

そこに流れている背景やねじれ、
矛盾と葛藤の交差点のような場所に、いつも心が向かう。

さらに言えば、
その“ねじれ”の中で起こる微細な変容のエネルギーや、
それに伴って立ち上がる気づきや罪悪感、誇りや赦しといった
複雑な感情の絡まりこそが、最も豊かな領域だと感じている。

人はそこで、優しくもなり、
同時に、凛とした厳しさを携えていく。

コラムを書くという行為もまた、
そうした現れに、自分の内側がどう反応したのかという痕跡を残すことだったのだと思う。

「誰かのため」ではなく、
「この一瞬を、通り過ぎたままにしたくない」。
ただ、それだけの理由で、私は書いている。

終節|問いを手放すように

問いというのは、追いかけすぎると、
かえって遠ざかっていくことがある。

「僕は一体、何がしたいんだ?」
あれほど真剣に向き合っていた問いも、
ふとした拍子に、ふっと手からこぼれ落ちてしまう。

でも、そのとき、気づくのだ。
「あぁ、もういいのかもしれないな」と。

何かを見つけるより先に、
何かを証明するより手前に、
ただ、その瞬間に立ち止まっていること自体に、
どこか深い安堵がある。

書くことも、生きることも、
たぶんそんなふうにして続いていくのだろう。

問いを大切にしながら、
でも、問いにしがみつきすぎずに。

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